森の中で新鮮な空気を吸ったり、海の波の音を聞いて、気持ちのいい経験をしたことは誰にでもあると思います。本書は、なんとなく自然から影響を受けているなと感じているものを、最新の科学を取材し明らかにしています。
趣味がなく、休日は家でゴロゴロYouTube見て過ごしてしまう人、都会に住んでいて、人工的に作られた建物ばかりを見て過ごしている人にはおすすめです。
著者は脳と自然の関係を探るため、日本、韓国、フィンランド、スコットランド、スウェーデン、シンガポールを飛び回り、実際に研究者に会い、実験に参加して感じたことを書いています。
自然が及ぼす視覚・嗅覚・聴覚への影響や、PTSD、ADHDに対する効果など、様々な場面での関係を明らかにしています。
驚いたのは、千葉大学の森林セラピーの研究が取り上げられていることです。私の家の近郊にセラピーロードというものがあり、たまに歩いています。セラピーロードを歩くとストレスホルモン、コルチゾールの値が下がったり、血圧が下がったりします。そのことはセラピーロードの入口に設置されている看板から知っていましたが、アメリカの方がまさかセラピーロードについて取り上げているなんて思いもしませんでした。それほど有名な研究なんですね。
著者はアメリカのジャーナリスト・ノンフィクション作家で、環境・健康・科学に焦点を当てたものを執筆しています。科学的なデータをただ紹介するだけではなく、研究者たちの人柄の紹介を織り交ぜていて、文章のうまさが感じられます。
人は自然と共に暮らしていましたが、自然から離れて暮らすのが当たり前の時代になりました。自然の中に少しでも戻れば、人間本来の生命力みたいなものが取り戻せるのだと思います。家の中で過ごしてばかりいて、モチベーションが上がらないと嘆いている人にも、ぜひ読んでいただきたいです。
