読書メモ

村井俊哉「統合失調症」

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私の家族が統合失調症で、そのことを知ったのが約10年前。大きな書店でこの病気についてかかれた本を何冊か読んでみて、遺伝と関係があることを知り衝撃を受けた。いずれ結婚するとして、相手にこのことを伝えなければならないからだ。そのころ病気を持った家族の状況も悪く、私は遠く離れたところに住んでいたが、問題が大きすぎて、家族が統合失調症であることと向き合うことができずにいた。

時間が解決してれることは確かにあり、ようやく再度この問題と向きあう心の余裕ができ、本書を手に取ってみた。

10年前に読んだ本はどれも専門的な内容で難しく感じたが、本書は病気について広範かつ平易かつ客観的に書かれており、当時より医学的にこの病気について分かってきたことがあるにせよ、当時読んでいれば、この病気をそれほど恐れていなかっただろう。

病気については分からないことだらけであるが、現在有力な「異常セイリエンス仮説」は説得力があった。セイリエンスとは顕著性と訳されたりする意味で、生活の中で様々な音や色に囲まれているが、一つ一つを気にしたりはしない。一部だけに注意を向けている。この注意の向きやすさ、目立ちやすさをセイリエンスと呼ぶ。このセイリエンスはドパミン神経系に関わっていて、ドパミンの神経系の働きが過剰になると、例えばささいな音が大きく目だち、大きな意味を持つ音として感じてしまう。これが幻覚や妄想につながっていく(詳しくは本書を参考にされたい)。

統合失調症は精神疾患の中では重症な病気であり、病気を持つ家族は大変な苦労をされていると思う。ご家族の方にはぜひ本書で正しい知識を確認していただきたいし、この病気に対する偏見があるため、この病気のことを知らない多くの方にもぜひ読んでいただきたい。

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