読書メモ

デイビッド・エプスタイン「RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる」

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事例が豊富で、しかも重要な事例は深掘りされていて、読みごたえがあります。内容が濃く、素晴らしい本でした。

仕事で経験もあるし実績もある、その道のスペシャリストではある。だがしかし、ずっと解決できていない問題を抱えているとします。そんな人におすすめです。

この本では、スポーツ選手、芸術家、科学者など、優れた業績を上げている人を例に挙げ、隔たった知識や経験ではなく、様々な知識や経験が画期的なアイデアを生みだすことを示しています。

また早期教育で、子供に早い時期にピアノやバイオリンを習わせ専門特化させ、他のことに触れさせないことに批判的です。早く始めるとスタートダッシュで先頭に立てますが、やがて追い付かれ、伸び悩み、いろいろなものに触れてきた子たちに抜かれてしまうのです。

いやいや、ゴルフのタイガー・ウッズは、幼いころに父親から才能を見出され、専門的なトレーニングを積んで、そのまま成功したではないかという人もいるでしょう。しかし、ゴルフというルールが単純で、同じ動きを正確に繰り返すことが求められる競技だけでのことです。世の中はもっと複雑です。テニスでさえ、テニスを始める前に様々なスポーツをしていて、テニスを本格的にプレーするのが遅かったロジャー・フェデラーが素晴らしい業績を上げています。

任天堂の横井軍平さんは、すでに廃れた安価な技術を組み合わせて、ゲームボーイという携帯型のゲーム機器を開発し大ヒットさせました。ゲーム機が、より鮮明でより滑らかな映像を追求する中で、モノクロ画面なのに、価格の安さ、丈夫さ、電池の持ちやすさ、ソフトの開発のしやすさで優位に立ち、成功を収めました、新しい技術を追求するのではなく、古い技術の新しい使い方を考えたわけです。この思考は専門特化に集中する人には思い描けないのです。

著者はアメリカの科学ジャーナリストです。コロンビア大学院で環境科学の研究をされていたようですが、ジャーナリストに転向しています。主にスポーツ科学の記事で実績があるようです。

AI・ビッグデータ・IoTなどの技術が進歩し、現代はますます変化が激しい時期に来ています。この傾向はこれからも変わらないでしょう。そういう今を生き抜く上では、一つのことに固執するのではなく、別の分野の知識や経験を生かせるのは強みです。まずはこの本を読んで視野を広げてみるのもいいかもしれません。

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